
『日本一の旬を味わう! 知床鮭ウィーク(以下鮭ウィーク)』は、知床で2021年に始まったイベント。鮭の漁獲量日本一を誇る斜里町が主体となり、地域のホテル・飲食店と提携してオリジナルメニューを提供したり、鮭に関するイベントを開催したりと、さまざまな角度から日本一の鮭の魅力を発信している。2024年の今年は10/1(火)〜10/10(木)に開催された。
『日本一の旬を味わう! 知床鮭ウィークと斜里・ウトロをめぐる』では全3回に分けて漁獲シーズンの鮭日本一の町、斜里町の魅力に迫る。
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斜里町は世界遺産である知床半島の北側に位置する町だ。鮭日本一の町として知られている斜里町には、どんな文化と生活があるのだろうか? 鮭ウィークを深堀りをする前に、まずは斜里町市街地を街歩きをさせてもらった。

秋の本州と知床の気温差は10度ほどだと言われている。ソファなどに座るとクッション奥が冷たく、北海道に来たのだなと実感する。知床というと流氷などの厳しい自然を想像するかもしれない。しかし、秋ならば本格的な防寒をしなくてもダウンジャケットを用意していけば、快適な涼しさを味わえた。ちなみに斜里町は冬も北海道のなかでは比較的降雪量が少ないそうだ。
知床半島の雄大な自然のイメージから、正直はるかに遠い場所を想像していた。道内の別地域出身で「いつか行きたいとは思いながらまだ行ったことがない」と言う友人もいた。しかし実は、東京から斜里町までは飛行機→バス(車)ならば約3時間ほどで行くことができる。車があったほうが旅程の自由度が増すが、市街地を中心に回れば運転ができなくても十分に観光を楽しめる。本記事で紹介するエリアはすべて徒歩圏内で移動が可能だ。
斜里町では町と自然が一体となっている。取材日は曇りだったが空が大きいので重厚な雲に覆われている日も、解放感がある。知床では花や木一つひとつが大きく、色が濃いエネルギーを発していた。探索中に町の小川にも上ってきた鮭を見ることもできた。
最初に辿り着いたのは『道の駅しゃり』。各種観光案内や地元の特産品の販売などをおこなう、斜里町観光におけるセーブポイントのような存在だ。道の駅の前には、鮭ウィークに連動したイベントの一環で、フードコーナーに『北洋共同漁業部』が出店。
自慢の鮭を使った料理がリーズナブルな価格で提供されている。鮭といくらの親子丼やサクラマスのレアカツ、知床の昆布塩を使ったフライドポテトなどが販売されていた。
知床半島の雄大な自然のイメージから、正直はるかに遠い場所を想像していた。道内の別地域出身で「いつか行きたいとは思いながらまだ行ったことがない」と言う友人もいた。しかし実は、東京から斜里町までは飛行機→バス(車)ならば約3時間ほどで行くことができる。車があったほうが旅程の自由度が増すが、市街地を中心に回れば運転ができなくても十分に観光を楽しめる。本記事で紹介するエリアはすべて徒歩圏内で移動が可能だ。
斜里町では町と自然が一体となっている。取材日は曇りだったが空が大きいので重厚な雲に覆われている日も、解放感がある。知床では花や木一つひとつが大きく、色が濃いエネルギーを発していた。探索中に町の小川にも上ってきた鮭を見ることもできた。
最初に辿り着いたのは『道の駅しゃり』。各種観光案内や地元の特産品の販売などをおこなう、斜里町観光におけるセーブポイントのような存在だ。道の駅の前には、鮭ウィークに連動したイベントの一環で、フードコーナーに『北洋共同漁業部』が出店。
自慢の鮭を使った料理がリーズナブルな価格で提供されている。鮭といくらの親子丼やサクラマスのレアカツ、知床の昆布塩を使ったフライドポテトなどが販売されていた。

ランチタイムには地域で働く人が鮭ランチを楽しんでいる。地域の鮭ウィーク、鮭に対する関心の高さがうかがえた。
また斜里町にはいたるところに『知床トコさん(以下トコさん)』がいる。2015年にはじまった知床ブランディング・プロジェクトから誕生した、ヒグマのシンボルキャラクターだ。観光案内の看板やポスターなどトコさんの存在は、斜里町だけではなく、知床ブランディングで重要な役割を果たしている。
よく見ると鮭ウィークのメインビジュアルにも、しっかりとトコさんがいるのに気づくだろう。
今年2024年7月には道の駅しゃり内に、ショップ・コミュニティ『Shiretoko Sustainable Station COBAKO Shari』がオープン。トコさんグッズを買うことはもちろん、コーヒー・斜里の農産物を使った人参ジュースを飲むこともできる。
取材中にすれ違った小学生が「今日道の駅で遊ぶ?」と話しているのを聞いた。COBAKO のエリアでリモートワークをする人もいた。道の駅しゃりが地域の人々のコミュニティスペースとして愛されているのが伝わってきた。
よく見ると鮭ウィークのメインビジュアルにも、しっかりとトコさんがいるのに気づくだろう。
今年2024年7月には道の駅しゃり内に、ショップ・コミュニティ『Shiretoko Sustainable Station COBAKO Shari』がオープン。トコさんグッズを買うことはもちろん、コーヒー・斜里の農産物を使った人参ジュースを飲むこともできる。
取材中にすれ違った小学生が「今日道の駅で遊ぶ?」と話しているのを聞いた。COBAKO のエリアでリモートワークをする人もいた。道の駅しゃりが地域の人々のコミュニティスペースとして愛されているのが伝わってきた。

道の駅から徒歩3分の場所には、ユニークな『ヒミツキチ』がある。『ヒミツキチこひつじ』。基本的に水・土・日の11時~18時にオープンしている※。内装は古民家をDIYでリノベーションしたものだという。うどんと甘味の『甘味処「美つ八」』、薪窯で焼いたパンが人気の『メーメーベーカリー』、おにぎりとスープを取り扱う『梅とら』が入っている。梅とらは鮭ウィークにも鮭といくらのおにぎりの販売で参加している。今回は梅ソーダと白玉パフェ(抹茶アイス追加)をいただいた。
またリトルプレス・モバイル古書店『流氷文庫シリエトク』の活動拠点でもあるヒミツキチは、知床に関する本や、シリエトクを主催する中山さんがセレクトした本を楽しむことができる。※毎月営業日・時間が変わる場合があるのでヒミツキチの営業カレンダーを要確認
ヒミツキチをはじめ、斜里町にはアートやカルチャーに触れられる施設も多い。演奏会や演劇、なかにはヨガ講座やプロレス、コメディショーなど、多彩なイベント・公演をおこなっている『ゆめホール知床』。童話に出てくるような美しい建物が印象的な『北のアルプ美術館』などだ。知床・斜里の大自然に惹かれた住人の中には、アーティストとして活躍する人も少なくないそうだ。
またリトルプレス・モバイル古書店『流氷文庫シリエトク』の活動拠点でもあるヒミツキチは、知床に関する本や、シリエトクを主催する中山さんがセレクトした本を楽しむことができる。※毎月営業日・時間が変わる場合があるのでヒミツキチの営業カレンダーを要確認
ヒミツキチをはじめ、斜里町にはアートやカルチャーに触れられる施設も多い。演奏会や演劇、なかにはヨガ講座やプロレス、コメディショーなど、多彩なイベント・公演をおこなっている『ゆめホール知床』。童話に出てくるような美しい建物が印象的な『北のアルプ美術館』などだ。知床・斜里の大自然に惹かれた住人の中には、アーティストとして活躍する人も少なくないそうだ。


『斜里町立知床博物館』も地域の重要な文化施設だ。入館料は300円で、なんと斜里に住む人はいつでも無料で観覧することができ、斜里町の歴史・自然・文化が知床半島の成り立ちから余すことなく展示されている。施設の裏にある『野外観察園』には知床の高山植物が植えられているので、中を歩き回るのも楽しい。
縄文時代からさかのぼって斜里の漁業の歴史を紹介するコーナーや、天井から吊り下げられたミンククジラの骨格標本や、鮭の産卵を再現したレプリカは圧巻。このレプリカには手を入れるためのトンネルがついていて、鮭の卵のレプリカに触ることができる。こどもミュージアム(キッズスペース)にもたくさんの鮭のぬいぐるみが置いてある。斜里町にとっていかに鮭が大きなシンボルなのかが感じられた。
縄文時代からさかのぼって斜里の漁業の歴史を紹介するコーナーや、天井から吊り下げられたミンククジラの骨格標本や、鮭の産卵を再現したレプリカは圧巻。このレプリカには手を入れるためのトンネルがついていて、鮭の卵のレプリカに触ることができる。こどもミュージアム(キッズスペース)にもたくさんの鮭のぬいぐるみが置いてある。斜里町にとっていかに鮭が大きなシンボルなのかが感じられた。

また併設の『姉妹町友好都市交流記念館』では『知床ねぷた』が展示されている。最初は「青森ではなく北海道なのにねぷた?」と思ったが、そこには複雑な歴史があった。
1807年、幕府から斜里での警備のために派遣された津軽藩士100名中72名が、飢えと寒さにより死亡した『津軽藩士殉難事件』が発生。そして100年以上、事件は闇に葬られていた。しかし、1954年に記録が発見され、斜里町は1973年に津軽藩士殉難慰霊碑を設立し、慰霊を続けていた。このような経緯が縁となり、斜里町は1983年弘前市と友好都市盟約を締結した。それまで門外不出だったねぷたの伝統が斜里に伝えられ、以来40年以上毎年夏に『しれとこ斜里ねぷた』を開催している。
企画展も姉妹町友好都市交流記念館で展示される。取材時は『大標本展』が開催されていた。50年近い歴史の中で、1万点を超える生物標本を収集してきたという斜里町立知床博物館。知床半島の鳥類やヒグマなど貴重な標本を鑑賞できる。
1807年、幕府から斜里での警備のために派遣された津軽藩士100名中72名が、飢えと寒さにより死亡した『津軽藩士殉難事件』が発生。そして100年以上、事件は闇に葬られていた。しかし、1954年に記録が発見され、斜里町は1973年に津軽藩士殉難慰霊碑を設立し、慰霊を続けていた。このような経緯が縁となり、斜里町は1983年弘前市と友好都市盟約を締結した。それまで門外不出だったねぷたの伝統が斜里に伝えられ、以来40年以上毎年夏に『しれとこ斜里ねぷた』を開催している。
企画展も姉妹町友好都市交流記念館で展示される。取材時は『大標本展』が開催されていた。50年近い歴史の中で、1万点を超える生物標本を収集してきたという斜里町立知床博物館。知床半島の鳥類やヒグマなど貴重な標本を鑑賞できる。


この展示が特徴的なのは、標本一体一体に採集された場所と死因を開設したキャプションがついていることだ。駆除されたものや轢死したものや電線で感電死したものなども含まれており、彼らが知床の自然と人の中で生きていた命であることの重みが迫ってくる。

日が暮れ始めたころ、斜里町の宿泊施設『しれとこくらぶ』にチェックインした。市街地にあるにもかかわらず、白樺に囲まれたログハウスは高原のペンションのような雰囲気だ。
しれとこくらぶも、知床鮭ウィークに参加しており、限定メニューも提供されている。宿泊者はいつでも入浴することができる天然温泉もある。木の暖かみが印象的な空間だ。冬は暖炉を囲みながら食事を楽しむことができる。

ロビーに併設されている『喫茶年輪』は観光客だけではなく、地域の人の憩いの場にもなっている。喫茶年輪も鮭ウィークに参加しており、期間中限定メニューを提供していた。

北海道の食材は、噛めば噛むほどうまみとみずみずしさが口の中に広がる。こちらも鮭が絶品なのはもちろん、主食のごはんやパンが本当においしい! しれとこくらぶでは、米・小麦も北海道で採れたものを使用しているそうだ。木造の歴史ある部屋は、木の匂いにつつまれていた。静かな斜里の夜を感じながら、穏やかなぬくもりの中で過ごすことができるだろう。
次回は多角的なアプローチで長年漁業に取り組んでいる漁師の古坂さん、ユニークな視点で地域の観光業・飲食業に携わっているネイチャーガイドのピエさんから話を伺い、ウトロエリアの夜をめぐる。
参照:しれとこ斜里ねぷたの歴史